2014年7月4日金曜日

キャストインタビュー!放送記者他兼役 : 野津あおいさん

 こんにちは、スタッフSです。「8 -エイト-」の本番初日まで、いよいよあと一週間と迫ってきました。稽古場も一層、熱を帯びてきています。
 さて、今回のキャストインタビューでは、裁判の模様を伝える放送記者をはじめ、複数の役を兼ねて演じる野津あおいさんにお話しを伺いました。



(インタビュー:2014.6.28.北千住)

― 「8 -エイト-」のオーディションに応募しようと思ったきっかけを教えてください。

野津:西尾さん作・演出の作品に出演したことがあるんですけど、西尾さんの作り方ってすごい面白いんですよね。完成形に直線で行こうとはせずに、例えば、稽古の中で歌を歌ったり、ジャック・カロの絵のワークショップをやったり(ジャック・カロをやってみる)、作品に関係あると言えばあるけど、ないと言えばないようなことを、たくさんやっていく作り方が面白いんです。そういう風に回り道しながら作品を組み立てると、俳優の中の情報量が増えて、すごくいいんじゃないかなと思ってます。だから、また西尾さん演出の作品に出たいと思って応募しました。

― 俳優の中の情報量、というのはどんなことですか?

野津:例えば、「~~」(手元にあった紙に書いてある文章を読みあげる)というセリフがあったとして、それただ読むのは簡単だけど、その役がそれを言う根拠はなんなのか、それについてどういう体験をしてきたのか、とかがあって、そのセリフが出てくるわけじゃないですか。西尾さんのやり方は、そういう根拠の部分をたくさん作れる可能性があるやり方だなって思います。

― それがたくさんある方が、俳優としてはやりやすい?

野津:いや、やりにくい人もいると思います。つまり、早く形を作りたいという人。もしかしたら、そういう俳優の方が多いかもしれない。でも、私は根拠をたくさん作るやり方がすごくフィットする感じがします。

― 今回の稽古でも、そういう風になっていると感じますか?

野津:そうですね。ワークショップ的な部分がすごく多くて、裁判の傍聴にも行きましたし(裁判傍聴&通し稽古)。そうそう、裁判の傍聴には絶対に行かなきゃって思っていて、個人で行くつもりでした。そしたら、稽古の一環として組み込まれていましたね。

― これまで数多くの劇に出演されていますが、「8 -エイト-」をやっていて、他の劇との違いを感じていることはありますか?

野津:ワークショップ的な稽古が多いこととも関係しますけど、俳優のみんなの姿勢がおおらかというか、いろんな方法や考え方を理解して受け入れようという意思が強い気がしますね。いろんなことを受け入れながらやれていると思います。

 
衣装合せ中の野津さん


― 同性婚やセクシュアルマイノリティについて、「8 -エイト-」に関わる前に考えたことはありますか?

野津:あります。でも、セクシュアルマイノリティについていろいろ勉強させてもらった今になって思うと、例えば知り合いのレズビアンだと思っていた人が、本当はレズビアンなのかバイセクシュアルなのかは分からないなあって。以前は、全然知識がなかったなって思いますね。

― 「8 -エイト-」を始めてから、何か考え方が変わったことはありますか?

野津:うーん、以前は同性愛がマイノリティであるという面は、あまり意識していなかったですね。子供の頃に「1クラスに1人か2人はいますよ」って教えられて、だからそんなに特別な存在とは感じてなかったです。「8 -エイト-」をやってから、マイノリティである面にも注目するようになって、少数派にいたらどういう気持ちがするんだろうという視点から考えるのは新鮮な感じがします。

― 今回の役ですが、法廷と観客をつなぐ重要な役回りですし、いくつかの役を兼ねているということもありますし、演じていて難しさや楽しさはどんなところでしょうか?

野津:難しいですね、役割がはっきりしているようで、ちょっと曖昧というか、あんまり何をしたらこの上演に貢献できるのか、まだはっきりと分かってなくて。
ただ、曖昧な分、いろんな方法を試せるのは楽しいですね。それに、タム博士(※同性婚に反対する被告側証人)の正解を稽古で意外と早く引き当てられたことで、光明が見えてきて、これはいけるんじゃないかっていう感覚はあります。タム博士のシーンで遊べること自体も楽しいし、遊ぶ事で他の部分の可能性も見えてきた気がします。

― タム博士のシーンは、そのシーンだけを切り取っても、一人二役みたいなニュアンスがありますよね?タム博士を演じる中でも、声を変えたり体の向きを変えたりして、いくつかのニュアンスを使い分けているような。

野津:あれはなんなんでしょうね。意味が分からないですよね(笑)
ただ、タム博士も人間だし、ほんとは全部が悪い人じゃなくて、良いところもあれば悪いところもあるわけで、“これは所詮嘘ですよ、演劇ですよ”というのも出したい、というのがありますね。

― では最後に、どんな人に「8 -エイト-」を観に来て欲しいですか?

野津:うーん、最初は、映画祭を見に来るセクシュアルマイノリティの方の中で、西尾佳織を知らない人に観に来てほしいって思ってました。でも、最近は逆に、小劇場のお客さんが観に来たほうが意味あるのかな?って思っています。セクシュアルマイノリティの方は「8 -エイト-」で描かれている事自体は既に知っているでしょうし。でも、どんなお客さんに来て欲しいかって難しいですね。老若男女、いろんな層の人に観に来て欲しいです。


 (スタッフS
 “俳優の中の情報量”というのは、演劇未経験の私としては新鮮な考え方でした。しかし、これまでの稽古を振り返ってみると、確かにいろいろと回り道をしながら根拠になるような情報をたくさん蓄えてきたなあ、という気がしています。
 そして、今はまさに蓄えてきたものが本番の形になっていく過程にワクワクしているところです。
 みなさまも是非、公演本番にご期待ください!

 公演の概要はこちら http://tokyo-lgff.org/2014/about/8intokyo

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